YAYOI LOGIC

備忘用。

【追補】遅れてきた6人目のエリカさんについて

「エリカさん、3人ってことはないよね?」という声もあったので、どちらかというとより二次創作的な位置づけが強いのかなと思って省略したお三方についても、メモ書き程度にまとめておきます。

 

4.「らぶらぶ作戦」エリカさん(“あの子”エリカさん)

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 弐尉マルコ著の公式スピンオフコメディ『もっとらぶらぶ作戦です!』に登場するエリカさん。スピンオフコメディ漫画という性格上、肩の力を抜いたお祭り的な内容が多いため扱いは難しい。同じスピンオフでも、『咲 -saki-』の『咲日和』なんかは、作者から「正史である」ことが宣言されているけれども…。

 ほのぼの百合コメディからシュールなギャグまで、各キャラが自由に楽しく描かれている本作なので、エリカさんもさまざまな場面で愉快に描かれているけれど、やはりいくつか特徴はあるようだ。

 そもそも弐尉マルコ氏は、いちファンの立場として、みほまほエリのブラックなコメディなどを描いていらっしゃったところ、公式サイドに捕まって(?)、マンゴーをもぐなどの過酷な自我研修を受けた結果、ほのぼのみほエリ漫画(「迷子です!」)などを描き、多くのファンをエリみほ沼に突き落とす一因ともなった。それだけに、公式サイドからの「逸見エリカ観」を邪推する上では、貴重な資料でもある。

 

1)二人称が不安定

 本編エリカさんの二人称は、徹底して「あなた」に統一されている。「アンタ」とか言ってそうなイメージに反して、育ちがいいのか丁寧な印象だ。その点、『もっとらぶらぶ作戦です!』では、「あんた」の回(「迷子です!」「ライバルは宝物です!」)と「あなた」の回(「バレンタイン・黒森峰です!」)、さらに「貴方(ルビ:あなた)」の回(「カチューシャ日記です! 〜第二章〜」)があったりと地味に不安定だ。「あなた」と「あんた」では、一字違いだが大きな差があるので、エリカさん好きを常に悩ませる問題であるといえる。

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個人的には「あなた」呼びを推したい

 

2)まほ隊長を敬愛していて、みほに馴れ馴れしい嫌味を言う

 このあたりは、本編の内容を元にパロディや敷衍を行う『もっとらぶらぶ作戦です!』らしく、TV版の描写に比較的沿っていると思う。みほに対して義憤を滾らせていたり、罪悪感を感じていたりするそぶりはない。また、まほ隊長に対しては顔を真っ赤にして照れるなど、ドラマCD4でも見られたミーハーな一面を垣間見せてくれる。

 

3)みほに対して複雑な感情を抱いている

 これも、本編の内容を補完するような描写だけれども、その「複雑」っぷりは半端なく、コメディ中心でメリハリの効いた作風の中にあって、エリカさんがみほと絡んだり、彼女のことを思い出すような場面では、実にしっとりとして真意をはぐらかすような演出がなされがちだ。

 大まかに見ると、みほに対しては以下のようなスタンスであることが分かる。

 

 ・昔から事あるごとに嫌味や批判、注意をしていた(「真夏の納涼!怪談大会です!」)

 ・手を繋いで腕を引く、好みのお菓子を覚えている、「戦車を降りると頼りない」性格を憎からず思っている等、昔から世話焼きだった(「迷子です!」)

 ・「みほのいた頃」を回想するときは、明確な心情が語られない/心情を言語化できない(「バレンタイン・黒森峰です!」)

 

 このため、「昔はガミガミ文句を言いながらも憎からず思っていたんではないか」「みほがいなくなったことに、憤りや軽蔑以外の感情を抱いているのではないか」と思わせるものの、今のところそれ以上が語られたことはない。乙女心となんとやら。

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みほがいたころのバレンタインデーを思い出すエリカさん。明確に語られないからこそ、そこにあるはずの感情が際立つ

 

4)表情がとても豊か

 作風もあるけれど、本作のエリカさんはとても表情が豊かだ。怒ったり落ち込んだり照れたり目を輝かせて喜んだり、むすっとしたりすまし顔をしたり笑ったり慌てたり青ざめたり。この辺の、感情表現がストレートだけど性格的には素直ではない、という微妙な塩梅は、本編のそれに近い。他の媒体と比べても、ここでしか見れない表情は数知れず、ファンにとっても「エリカさんの表情イメージ」として印象深いものになっていると思う。

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たった一話でこれだけある。ひたすらかわいい

 

5)私服姿が見られる

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 本編はもとより、さまざまな媒体に展開される版権イラストですら私服姿のないエリカさんの、オフでの姿を見られるのは『もっとらぶらぶ作戦です!』だけ! ストイックな印象で、イメージ通りといえばイメージ通りだけれども、一方で謎の回想回では「例のパジャマ」も意識させるなど、侮れない。むしろいっそエリカさんの私生活の謎は深まった感がある。

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正直な話、「私服姿」なら版権絵タペストリーのこれが最強だ。フェミニン極まりない引っ込み思案のお嬢様、というイメージが黙してかつ雄弁に語られてしまった。マルコ先生の「あの子」回はこのイメージを物語化したものとも言える

 

『もっとらぶらぶ作戦です!』は、本編のサブテキストとしては立ち位置が難しいが、こと描写の少ないエリカさんについては、本編の「行間」を埋めるような描かれ方が多い。その上で、「迷子です!」「バレンタイン・黒森峰です!」「あの子(WEB出張版)」のような爆弾をしれっと投げ込んでくるという、油断ならない作品と言える。

 

5.リトルアーミーⅡのエリカさん(隊長エリカさん)

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 槌居著『リトルアーミーⅡ』に登場する、黒森峰女学園新隊長としての逸見エリカさん。『リトルアーミー』は、みほの小学生時代から始まる物語であり、『リトルアーミーⅡ』は彼女の小学生時代の友達・中須賀エミが主役となる物語だ。だから、ここではエリカさんはエミの歩む道を妨げる壁として登場する。その分、若干影も薄いが、いくつか特徴はあるようだ。

 

1)まほ隊長を敬愛し、みほのことは一切言及しない

 ある意味これが最大の特徴だろう。『リトルアーミーⅡ』では、エリカさんからみほに対する言及は一切ない。エミにとって、「自分の知らないみほの高校生の友達」があんこうチームなら、「自分の知らないみほの中学時代の同級生」がエリカさんになるのだけど、ストーリー上では特に取り上げられることはない。まほ隊長の後を継ぐ者として、その名に恥じない戦いをしようとしている点では、コミカライズの忠臣エリカさんを彷彿とさせる。

 

2)意外と表情が豊か

 そうでありつつ、このエリカさんはドヤ顔や余裕顔、じと顔などなど「エリカさんらしい」嫌味な表情をいろいろと見せてくれる。主に後輩のツェスカやライバルのエミに対して向けられるものだが、この辺はコミカライズエリカさんとは違うところだ。慢心にも見える自信満々な態度は、あくまでもまほ隊長の尖兵たらんとするコミカライズエリカさんの自信とは、少し毛色が違う。なにより、ギャグもこなせる(というかコメディリリーフぽさもある)点で、大きな差がある。

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 こういう表情が、ネットでの愉快な扱いにつながっていく面もある気がする

3)髪が長い

 地味だが案外気になる特徴のひとつ。本編では肩くらいまでの長さだったエリカさんの髪が、ここでは腰に届かんばかりに伸びている。大会終了後から伸ばしていたのかもしれない。

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ドヤ顔ガッツポーズが哀しいほどよく似合う

 

4)みほと再戦できない

 個人的には極めて重要な特徴だ。そもそも、『リトルアーミーⅡ』はエミがみほと再会するまでの物語で、その途中に立ちふさがるエリカさんは、どんなかたちであれ敗退するのだろうと思われていたが……。衝撃的なその結末は、ぜひご自分の目で確かめていただきたい。

 

 

6.リボンの武者のエリカさん(団長エリカさん)

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 野上武志×鈴木貴昭著『リボンの武者』に登場するエリカさん。黒森峰のタンカスロン義勇軍シュバルツバルト戦闘団(カンプグルッペ)」の団長という役回りだ。作者本人は「二次創作」と語る本作だが、お二人とも本編の主要スタッフであり、特に鈴木氏は雑誌掲載の「逸見エリカインタビュー」記事やドラマCD3の黒森峰回に関わり、エリカさんの掘り下げを各所で行ってきた人物。そのため、エリカさんの登場には大きな期待が寄せられていた。果たして、その期待は裏切られることがなかった。その特徴は、だいたい以下のような感じだ。

 

1)まほ隊長を敬愛し、みほに対して極めて強烈な執着を抱いている

 これが、『リボンの武者』におけるエリカさんの最大の特徴だろう。彼女はハッキリと、自分の眼中にあるのは「西住みほ」だけであると断言し、再び彼女と並び立つ日を夢見て、その前に立ちはだかるものは何であれ粉砕するという強い覚悟を持っている。ドラマCD3を漫画化した場面が登場することからも分かる通り、本作はドラマCD3の設定を引き継いでおり、そこで語られたみほとの関係、そして「再戦」の約束が、改めて強烈にクローズアップされている。

 西住まほの後を継ぎ、西住みほと並び立つ。甘えを捨て、強烈な覚悟で立つ肥後侍こそ、本作のエリカさんだ。

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これまで「黒塗りの怖い人」として登場し続けてきた本作のみほが、あわあわしたいつものみぽりんとしての姿を初めて表したのが、エリカさんの回想の中であるという事実も、実に味わい深い

 

2)みほへの感情をはっきりと言語化している

 「あなたがいなくなって以来、私はより肩肘をはって生きてきた」「でもあなたはあっけらかんと戦車道に戻ってきて、他校であんなに楽しそうに…」等々、みほへの感情をハッキリと言語化している。それは、ノベライズともコミカライズとも毛色の違うものだった。みほを少なからず心配していたこと(ドラマCD3の漫画化シーンで、みほの笑顔を見て安堵の笑みを漏らすシーンでわかる)、大洗での姿にイライラしていたこと、遠くへ行ってしまったと感じていること…。かつての友人として、ライバルとして、敬愛する隊長の妹として、このエリカさんはみほのことを憎からず思っているようだ。

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それにしても、エリカさんのあんこうチーム像は、悪いインターネットに毒されすぎている。それだけ腹が立っていたんだろう

 

3)西住姉妹に頼りきりだったことを自覚し、向き合っている

 団長エリカさんの根幹をなす性質であり、「逸見エリカインタビュー」「少し久しぶりの黒森峰です(ドラマCD3)」と続いて鈴木貴昭氏が描いてきたエリカさん像を継承する描写とも言える。

 ここでのエリカさんは、自分が「(戦車道においては)西住姉妹に頼りすぎて、その背に隠れるようにして生きてきてしまった」ということを自覚している。そして、その弱さが黒森峰のニ連敗の要因でもあると感じている。だからこそ、まほ隊長が引退し、みほももう戻って来ないであろう来年に向けて、「もう自分には隠れる背中などない」という事実に向き合い、「西住まほを継ぎ、西住みほに並び立つ」ことを誓っている。つまり、西住姉妹の「おまけ」ではない、ただ一人の戦車道人として立とうという決意である。その行く末がどうなるのか? それは、楯無高校戦の決着が教えてくれるのかもしれない。

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敬愛する2人の背中。もはやそこにこそこそと隠れるエリカさんではない

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まあ、隠れてる姿も可愛いんだけど

 

 

以上、駆け足ですが、6人目のエリカさんまで、整理してみました。

個人的には、本編との接続が強い団長エリカさんが好きですが……今後、本編ではどのような補完がされるのでしょうか。三千世界のエリカさんを思いつつ、気長に待ちたいと思う今日このごろです。